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無料のおもしろネタ画像『デコじろう』用アイコン02 まちこの恋文141   

夜が

あったかい。


太陽は向こう側。



光と影は、わたしの中に、溶けた。



いまこそ、ひとりぼっち。



わたしは、毎日、死んで、毎日、生き返る。


手が動くのが気持ちいい。

足で、歩くのがきもちいい。

すりあし、つま先あるき、雨音にあわせて、耳が鳴るから、

体がつぶつぶ、しっとり、動き出す。


身体の形をいくつも変えて、泣いても笑ってもいない。


ただ、喜んでいる。


錆びた手摺りが、トラックのテールランプが、アスファルトの白いラインが。

冷たさと一緒に、温もり。


一本のたばこの小さな煙に、ひとりでつぶやく。


「見つけた。見つけた。見ぃつけた~。」






あたしは、毎日死んで、毎日、生き返る。


鼻を通る空気、今だけの湿気に。

髪を、どうしても、ほどいてしまう。

そして、髪の一本一本に、触り心地に、おどろく。


ヘアゴムが伸びたり縮んだりすることにおどろく。


雑踏の中の人と人が、誰かがだれかを眺める視線が。

たくさんのひとりぼっちが。


その配置と空間が。


何かを待っているけど、もう、とっくに、待ってなんかいない。


そっと、遠くまで、広がっていく、生の実感。


意味をもたない言葉が、喉を鳴らす。


傘をさす老人の、

傘の形に驚く、おじいさんの手の皺と血管におどろく、

垂れた頬と、瞼の産毛。


血脈の列車。



見上げた空の、鳥のはばたきが、エイトビート。



わたしは、毎日死んで、毎日、生き返る。



家と、家、部屋と、部屋の、明り、だれかの生活。


いくつもの世界。


うっかり見上げた、夜空の見えない無数の星。


見えない星から、夜空見上げても、地球は太陽ほどみえないだろうけど、



街の灯り、ビルの光、電灯の。家の。たき火の。


一本のたばこの小さな火。


ゆっくりすぎて、回ってるように感じることのできない地球の、


素早く燃える、一本の短い命、今が燃えて、青白い煙は、竜巻。





そうして、わたしは、毎日死んで、毎日、生き返る。


そんでもって、わたしは、おどろく。


アルミニウム缶、陶器、紙、机、鉛筆、ふた、ティッシュ、窓、カーテン、

TV,パソコン、蛍光灯、部屋、壁紙、レール、本、文字、

人間たちの発明品に、おどろく。


夕食の、一品、一品に、おどろく。


その色に、味に、触感に、


風呂場におどろく、シャワーにおどろく、

お湯に驚く、湯沸かし器におどろく

発見する、工具に、発見する、

この構造。この使い心地。


わたしは、発見する、色を発見する、形を発見する。


感情なんて、吹き飛ぶくらいに、

あたしなんて、吹き飛ぶくらいに、世界そのものに、

感動する。


あなたの所作が、血液が、遺伝子が、夜が朝が、

空気も含めて、全部が、この世を満たしてくる。


あ!から、ん!!の間の全部にぶっとばされる。


一滴、一滴、と、落ちる雫の、リズムに聴き入る。


わたしは、いつまでも、時間と空間と、想像力と、ひとりぼっちに


愛されて、

死のことも、生のことも、完全に、忘れてしまう。


わたしの微熱。


こうして、あたしは、社会性を失っていく。
まちこの恋文141_c0195271_0501574.jpg

なにもかも、世界のせいだ。

まちこ

by kojiki-machiko | 2013-11-01 00:23

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